親知らずについて

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ある矯正歯科医が考える第3大臼歯(親知らず)の利用価値

一般の歯科では、親知らずで何か起これば抜歯と相場が決まっていますが、一部の矯正歯科医においては若干事情が異なります。
例えば、第1大臼歯は6歳臼歯と言って6~7歳頃に、第2大臼歯は12~3歳頃にはえてきます。
その頃は、歯のことなんかに関心がなく、いい加減にしか歯を磨いてなくて、いつの間にか虫歯になっていたり、虫歯が進行して神経を取って治療されていたりします。

そういう状況は、成人の方にはよく見られる光景です。
一方、矯正治療、特に成人の矯正治療では、子供の治療のように顎の成長発育が利用できませんから、歯を抜いて治療する場合が往々にしてあります
矯正治療を始めるとなると、まず検査、診断をして治療方針を決定するのですが、本来であればこの歯を抜いて、たとえばよくする第1小臼歯を抜いて治療すべきところ、第1大臼歯の状態が悪いので小臼歯を抜かないでこれを抜き、その代わり虫歯にもなっていない健全な親知らずを噛み合せに参加させようという治療方針も考えられます。
例え親知らずが横になっていたとしてもです。
この場合、当然治療期間は長くなり、それに伴い費用も若干増えますが、長い目で見ますとこの方が絶対有利という状況が作れます

当院成人矯正のHPの中で、「歯を抜かない治療」のページにこの考え方の一部を説明していますので参照してください。
こういう治療の発想は、矯正医しか思いつきません
一般の歯科の先生では出てこない考えですので、もしあなたが矯正治療を考えており、一方で大きな虫歯もありこの治療もしないといけないと思っているのでしたら、まず始めに矯正歯科医院を受診されることをお勧めします。

邪魔者扱いの親知らずが、意外とお宝になるかもしれませんよ。
以下、症例をお見せします。
ご質問がありましたら、当院までお問い合わせください。

初診時

年齢:19歳4か月、女性

治療前

1正面

下歯列全体が前に位置し、上下前歯の切端同士が一致しています。
(本来は、下の前歯は上の前歯の後ろにあり、重なりが2~3mmあります。)上下正中も一致していません。
上右側2番目の歯が奥に隠れています。

2

左右第1大臼歯に冠がかぶさっており、第2大臼歯に大きな詰め物がされています。
前歯の1本が後ろにあります。

3

左右大臼歯に詰め物があり、特に左の第1大臼歯は大きな詰め物がされています。

4

上の犬歯が下の歯とあたっていません。

5

上下しっかりと噛み合ってなくて隙間が目立ちます。

6レントゲン写真

神経のない歯が5本あり、左下第1大臼歯の根の先端に膿の塊である球状の黒い影がみられます。
親知らずは4本とも未萌出です。

治療方針

本来であれば、左右上下の小臼歯を各1本ずつ抜くところですが、これらの歯は神経が生きている健全歯なので右下以外は抜かず、代わりに冠がかぶり神経のない3本の第1大臼歯と右下の第2小臼歯を抜いて治療をしました。
治療期間は2年1か月。
その後3年5か月経過した口腔内の写真を以下にお見せします。

治療後

1正面

初診時後ろにへっこんでいた切歯は歯列内に納まり、上下正中線はほぼ一致しました。

2

冠がかぶっていた歯はなくなり、前歯はきれいに並んでいます。

3

初診時大きな詰め物がされていた左側の第1大臼歯の位置に第2大臼歯が来ており、その後ろに親知らずの一部が見えています。(後のレントゲン写真で確認してください。)

4

下の犬歯と小臼歯の間に上の犬歯がしっかり噛みこんでいます。

5

上下の臼歯がしっかり噛みこみ、大きな隙間はありません。

6レントゲン写真

冠がかぶっている歯はありません。
また神経のない歯は前歯に2本だけです。
全体をながめると歯はほぼ平行に並び、左下第1大臼歯を抜いたところも第2大臼歯、続いて親知らずが平行に並んでいます。当然抜いた隙間もありません。
右下は小臼歯を1本抜いていますが、その代わり大臼歯が3本あります。
初診時のレントゲン写真と見比べてください。
初診時冠がかぶって白く抜けていた大臼歯や、神経の処置を受けた臼歯はなく、治療後見た目にもすっきりしたレントゲン写真になっていると思いませんか。

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